第一話 のらにわとり誕生 第二話 花の芽がでなかった隣の家の庭 第三話 二世誕生 第四話 にわとりにもあったいじめの世界 第五話 のらにわとり軍団との別れ 番外編 その後の、のらにわとり軍団 |
第一話 のらにわとり誕生
第二話 花の芽がでなかった隣の家の庭
第三話 二世誕生 のらにわとりなのでその辺、いたるところに卵を生みまくる。家の前には手入れがいき届かない庭があって雑草が生えている。その中にも一杯、生んでいるようで、うかつに歩こうものなら、踏んずけてつぶしてしまうような状況であった。腐っているかもしれないのでうかつには食べられない。割ってみると中にはひよこの姿になっているものもあった。これがうまいと東南アジアかどこかの料理で紹介していたのを見たことがあるが、さすがに食べなかった。にわとり小屋に生んであった新鮮な卵は、市販の卵とは比べ物にならないほどうまい。黄身は市販のものは薄い黄色で薄べったいが、のらにわとりの卵は小さめではあるがオレンジ色で盛り上がっている。これでたまごかけごはんを食べると最高。この上ない幸せを感じたものである。 前書きが長くなったが、第一話でオスとメスがいることを紹介したがオスとメスがいると、どんどんひよこが生まれるのである。にわとりにも個性があって、卵を生みっぱなしで、そのまま、ほっておくにわとりもいるし、卵を見るとそれを孵化させようとがんばるにわとりもいる。たまごを孵化させようとしたにわとりは二羽程度いたと思う。なぜなら日に日にひよこが増えてくるのである。この卵を抱いて孵化させようとがんばっているにわとりに第一話で紹介した、一匹狼のチャボがいた。にわとり小屋にずーとすわったきり、動かないのである。たまごをとろうとすると怒ってとらさせない。たまごが孵化するまですわったきりで、食事をろくにとらなかったようである。このがんばりは他のにわとりにはなく、回りから見ていると励ましてやりたいような気持ちにもなった。 要は変なにわとりなのである。でもこのように回りからどのように言われようが、がんばっている人もにわとりも好きである。そう言えば朝の6時ころから畑に行ったきり、夕方に「朝めし!!」と言って帰ってくる私も相当変かもしれない。最近、となり近所の農家から「百姓まかせ」と呼ばれている今日この頃である。 おかげでにわとり小屋は満員状態となり、親にわとりとひよこが一緒にいると、踏んずけることにも成りかねないので、うちのママがひよこと親鳥だけを一緒に居られるように別の小屋をつくってやった。それでも悲劇はおきた。(詳細は、第4話、にわとりにもあったいじめの世界で紹介予定)ひよこは、ひととき5羽から6羽程度はいたと思う。昼間、2つグループに別れて行動する、のらにわとり軍団に、どのような基準があるのか、ひよこに聞いて見ないとわからないが、それぞれのグループに別れて、後からチョコチョコと一列になってついていくのでる。かるがもの親子のように。 第二話でも書いたが、ひよこも集団でいると強い。犬も猫も恐れない。犬を見ても猫を見てもそしらぬ顔である。もっともこのころになると、お互いの存在を尊重しているようで、どこかの新顔ののら犬が来ようものなら、コリー犬のチーコと野良犬のしろが、にわとりを守るように攻撃するのである。これを見ていたのらにわとりもよせばいいのに一緒になって攻撃するものもいた。そういえば一匹、犬に噛まれて、名誉の戦死をしたにわとりもいた。このにわとりはひよこから生まれて一ケ月程度立った若者のにわとりであった。にわとりにも血気さかんな時期があるようである。または、OJT(*1)計画の一環かもしれない。そうだとするとトレーナのミスである。死んだら何もならない。 相変わらず近所をひよこを従えて大きな顔をして歩いているにわとり軍団が見られた。 *1 OJT(on the job training.):現場で体験しながら教育する方法。 |
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第四話 にわとりにもあったいじめの世界 次から次へとひよこ生まれるものだから鳥小屋は満員である。にわとりには親という自覚がないのか、ひよこだからと言ってかばうようなことはしない。生むためには一生懸命に努力するチャボがいるが、生んだあとはほったらかしである。人間にはもっと悪いのがいる。生む努力もしないで生んで育てる努力もしない、にわとり以下である。 餌をやったときなどは大変である。にわとりの足の間から頭を出すひよこがいると、足で追い払うのである。このような状況のとき、ひよこにとって一番危険でる。にわとりが餌ばこに集まってきて、お互い、われ先にと足をバタバタさせながら食べている。その中にひよこが割り込もうものなら、踏み潰されてしまう。危険な状況なので以前にも書いたが、うちのママが大人の鳥小屋とは別の鳥小屋を作ってやったので多少危険は緩和された。えさを食べるときにこどものことを考えて、先に食べさせるようなことは、にわとりはしない。えさがなくなるまで我さきにと食べるのである。これはいじめというよりも本能だけで行動しているだけかも。 このようなこともあった。にわとり軍団が外で歩いているときに、一匹だけ仲間に入れないようについてくるなと、来ないように反対方向に追っかけるのである。もしかして別のグループから意見が合わずに移ってきたにわとりかもしれない。よくわからないのが,本能だけで生きているだけかと思うと、このようにけんかやいじめもある。何を考えているのか、にわとりに聞けるとおもしろい。ちょっと前に犬の言葉を翻訳するおもちゃが発売されたが、にわとりのことばを翻訳できるともっとおもしろい。どっちが主流でどちらが反主流かはわからないが、どちらも社会保険を収めていないのに比べると、にわとりには社会保険を収める義務はないから罪はまだ軽い。 |
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第五話 のらにわとり軍団との別れ のらにわとり軍団も誕生から2年が経過していた。このころになると派閥争いなのか、仲間われか、いじめかよくわからないが、1匹、2匹と数が減ってきた。中には飽き足りた日常から逃れて、山下清のように放浪の旅に出たにわとりもいるかも知れない。出ていったにわとりは決して帰ってくることはなかった。また、年をとったのか卵も生まなくなってしまった。病気で亡くなったにわとりもいた。鳥小屋でうずくまったまま、えさもたべなくて元気がないのである。一度に何匹も発症することはなかったので鳥インフルエンザではない。この頃になると年をとって気持ちが丸くなったのか、協調路線をとって、2つのグループも1つグループとなっていた。最初のころは元気よく、世の中、にわとり軍団のためにあるように、肩を怒らせて歩いていたが、この頃の軍団はなんだか後ろ姿が寂しげである。この中には例のチャボもいた。来たころのチャボはすごかった。家の前に竹やぶがあるのだが、夏は8メートルくらいある高さまで飛び上がり、そこでよく寝ていた。その元気もなくなったようである。軍団も3匹程度になってしまった。そろそろもっと自然に返してやろう、ということで、近くの林に離してやった。近くなので朝一番ににわとりの鳴き声が聞こえる。鳴き声を聞くことで元気に生きていることが確認できた。鳴き声も1年くらいは聞こえていたが、その後は静かになった。天寿をまっとうしたのか、のら犬やのら猫の襲われたかは、よくわからないがここで一世を風靡したのらにわとり軍団は消滅した。現在、のらにわとり軍団の名残はないが、となりの家の手塚さんの庭に多くの花が咲いているのを見ると、のらにわとり軍団を思い出すこの頃である。 |
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番外編 その後ののらにわとり軍団 自然に返してやったにわとりが健在だということが数カ月立ってわかった。自然に返してやった林のとなりに東郷さんのはたけがある。東郷さんのおばあさんが「野菜の種を蒔いたのに新芽が何かに食べられている。蒔いても蒔いても野菜ができない」とか。ぴーんときた。のらにわとり軍団である。東郷さんには悪いが「がんばっているな」と声をかけたいような気持ちになった。その年の東郷さんのはたけでは、いうまでもなく野菜の収穫ができなかった。 また、最近になってチャボがどこからきたのかわかった。近所にいろんなにわとりを飼っているうちがあった。たまたま家庭菜園へのいきがかり、声を掛けられた。とげのないたらの芽があるとのことで、見せてもらいに庭に入った。いろいろなにわとりがいた。その中にチャボもいた。ここから脱走したようである。 長い人生から見れば、ほんの一時だったが、楽しい時間を提供してくれた、のらにわとり軍団、ありがとう!! |